店名である「壬生(みぶ)」よりもでっかく「なぜ 蕎麦にラー油を入れるのか。」と看板を掲げる蕎麦屋がある。
同じく池袋にある「カレーは飲み物。」と似たような語感、そして似たような素っ気ないゴシック体の文字。
お察しの通り、系列店だ。
はっきり言ってこのセンスには振り落とされる寸前だが、かと言ってすごくいい店だったら食わず嫌いで損をすることになる。
ものは試しと行ってみた。
すでに14時に近かったが、店内の席は8割方埋まっている。
入り口の券売機で食券を購入して店員さんに渡し、セルフサービスの冷たいそば茶を持って好きな席に着く。
しばし後「ぶっかけそばのお客様〜!」と声がかかった。
ぶっかけそば(490円)
ここは肉そば(大・中・小ともに750円)や、鶏そば(大・中・小ともに750円)などの“つけそば”が看板メニューらしく、虎ノ門にある立ち食いの超有名店「港屋」のインスパイア系と呼ばれる店だそうだ。
しかし今日は「肉っ気は別にいいや」て気分だったし、価格もワンコインに収まる気軽さだったのでこのメニューを選んでみた。
メニューの横には“並盛”の表記があったが、たっぷりの蕎麦の上に鰹節、海苔、ネギ、揚げ玉、ゴマが山となり、丼の座高を超えて盛り上がっている。
天地をひっくり返しながらガシガシと混ぜ(店内の壁におすすめの食べ方として貼ってある)、一口啜ると、まず驚かされるのはその麺の特殊さ。
固い!
これは間違いなく、自分がこれまで食ってきた蕎麦の中で一番固い!
強いて表現するなら、茹で足りてない冷麺って感じだろうか。
しかしそれが不快かというとそんなことはなく、二口目からはすでにその食感を楽しんでいた。
本当に茹で足りてない冷麺だったらとても食えたもんじゃないだろうから、絶妙なバランスの上に成り立っている麺なんだろう。
甘めのツユにラー油の辛味が加わり、それから各種の具と固い麺が渾然一体となり、暴力的とも言えるわかりやすい旨味が一口ごとにやってくる。
蕎麦自体の風味とかそういったものを味わわせようという気もさらさら感じず、蕎麦とラーメンの中間というか、これはもう新しいジャンルの麺類と考えた方がいいのかもしれない。
卓上にはサラサラとした見た目の揚げ玉と生卵が置いてあり、これはなんとフリー。
後で調べると、先述の港屋と同じ方式らしいが、とにかく太っ腹だ。
半分ほど食べたところで、この揚げ玉と生卵を投入し味を変える。
揚げ玉のサクサクとした食感が復活し、玉子は全体をマイルドにコーティング。
※食べかけの写真ですみません
ここにニンニクチップがたっぷりと入ったラー油をさらに追加したものだから、いよいよ何を食ってるんだかわからなくなってきた。
が、とにかくうまいということだけは間違いない。
麺と具を食べ切ると、丼の底に隠れていたツユがやっと顔を出す。
これにセルフで約同量のそば湯を足し、指示書き通りに横の鰹節粉末を振って飲んでみると、これはもう、ほぼ魚介系ラーメンスープだ。
思わず最後まで飲み干した。
価格に対して満足度が非常に高く、また行きたくなるのは確実だと思う。
今度はもっとお腹を空かせて行って、肉そばなんかにも挑戦してみたいな。
「なぜ 蕎麦にラー油を入れるのか。」そんな奇をてらったキャッチフレーズも、TVの内輪ネタでは笑えないけど身内の内輪ネタは面白い、みたいな感覚で、店を出る時には好ましく見れるまでになっていた。
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